アルミ溶接

【ジュラルミンは溶接できるのか?】A2017・A2024溶接 完全ガイド

【ジュラルミンは溶接できるのか?】A2017・A2024溶接 完全ガイド

ものづくりだより217号
おはようございます。溶接管理技術者の上村昌也です。

ジュラルミン(A2017)や超ジュラルミン(A2024)は、航空機・モータースポーツ・治具部品など高強度用途に使われる代表的な銅系アルミ合金です。
しかしこの材料、実はアルミ合金の中でも最難関クラスの溶接材料です。
本記事では、その理由から具体的な対策、上村製作所の実務ノウハウまで網羅的に解説します。


【ジュラルミン溶接でよくある悩み】

・溶接後すぐ割れる
・強度が落ちる
・黒く酸化する
・他社で断られる

これらは「材料特性の正しい理解+的確な前処理」が欠けると必ず発生する問題です。


【なぜジュラルミン(A2017・A2024)溶接は難しいのか】

1. 溶接割れ(ホットクラック)が発生しやすい

A2017・A2024は凝固過程で割れやすく、適切な溶加棒を使わないと割れが避けられません。

2. 熱影響による強度低下

析出硬化型合金のため、溶接によって強度特性が変化します。
特にA2024は溶接後の強度低下が顕著です。

3. 酸化膜による欠陥発生

銅を含むため酸化膜が厚く、ピット・ブローホールの原因になりやすい材料です。
適切な前処理(研磨・脱脂)が必須です。


【上村製作所のジュラルミン溶接技術】

● 1. TIG溶接による高精度制御

直流TIGを中心に、電流・入熱・アークを厳密に管理し、割れ・巣を抑えた仕上げを実現します。

● 2. 適正溶加棒の選定(最重要)

  • A2017: A4043が一般的。強度が必要な場合はA2319。
  • A2024: 溶接難易度が高く、A2319が基本。


▶ 超ジュラルミン(A2024)もっと詳しく読む


【実際の溶接条件】

  • 溶接機:Panasonic YC-300BP4
  • 方法:直流TIG(2層盛り)
  • 電流:220A
  • 溶加棒:A2319BY 3.2mm
  • ガス:He+Ar混合
  • タングステン:純タン3.2mm
  • 余熱:180〜220℃

【よくあるトラブルと原因・対策】

Q1. 溶接後に割れてしまう

A. 予熱不足または溶加棒不適合。A2319+180〜220℃予熱が有効。

Q2. 溶接部分の強度が低い

A. 入熱過多の可能性。パルス制御で低入熱化すべき。

Q3. 黒く酸化してしまう

A. 酸化膜残存・ガス不良。前処理+十分なガス流量が必須。


【画像事例】

A2017・ジュラルミン溶接完成品

ジュラルミン溶接 完成品
A2017の溶接部(高精度仕上げ)

A2017 素材加工例

A2017 加工事例
A2017素材の切削+構造溶接例

【当社の加工・溶接実績】

  • A2017 T=30mm 航空機筐体(W455×D360)
  • A2024T3プレート構造溶接(強度検証済)
  • 小ロット精密TIG溶接(PT試験・歪み±0.5mm以内)

【まとめ】

  • ジュラルミン溶接は材料理解と温度管理が必須。
  • 溶加棒・予熱・治具・ガス管理で仕上がりが決まる。
  • 難材ほど専門工場での対応が安全・確実。

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よくある質問(FAQ)

Q. ジュラルミン(A2017)は強度を維持して溶接できますか?

A. A4043でも溶接可能ですが、強度確保にはA2319が推奨です。溶接後の強度低下を考慮した設計も重要です。

Q. A2024は本当に溶接できますか?

A. 非常に難材ですが、A2319+予熱管理で対応可能です。量産品では治具設計が必須になります。

Q. 溶接後の歪みを抑えるには?

A. 入熱管理・逆歪み・治具拘束が基本です。当社では製品ごとに治具を設計して歪みを最小化しています。


「他社で断られた」「難材で困っている」
そんな案件ほどぜひ当社にご相談ください。


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