溶接

サニタリー配管は溶接で勝負するな。受入基準で勝負せよ|裏波(sugaring)を潰す仕様決め

サニタリー配管は溶接で勝負するな。受入基準で勝負せよ|裏波(sugaring)を潰す仕様決め

サニタリー配管溶接で問題になるのは「溶接」より先に「仕様」と「受入基準」です

ものづくりだより423号
おはようございます。溶接管理技術者の上村昌也です。

食品、医療、半導体製造装置などのサニタリー配管では、管内面の平滑性と酸化防止が重要となります。内面に溶接ビードの不整や酸化スケール(テンパーカラー)が発生すると、液溜まりによる菌の繁殖や、コンタミネーション(異物混入)の原因になり得ます。

一方で現場では、管内面を大気開放のまま溶接して裏面が重度に酸化したり、入熱の過不足で溶け込み不良溶落ちが発生したりして、受入不適合・手戻り・納期リスクへ直結しやすい領域です。

本記事でいう「シュガリング」は、英語圏で “sugaring” と呼ばれる、バックシールド(パージ)不足などに起因する裏面(内面)側の重度酸化(酸化スケール)を指します。以降は主に「内面酸化」「酸化スケール」「テンパーカラー(溶接焼け)」の表現で説明します。

参考(用語の根拠):MillerWelds “Ten Common TIG Problems: A Visual Guide”

https://www.millerwelds.com/resources/article-library/ten-common-tig-problems-a-visual-guide

本記事では、厚さt1.5mm(50.8mm 2.0S)のステンレス配管で完全溶け込み(裏波)を成立させた施工事例をもとに、設計・生産技術・品質保証の方が発注前に決めるべき仕様(優先順位)と、受入で揉めない品質保証の進め方(検査・記録の考え方)を整理します。

内面品質を崩す失敗モード:内面酸化(シュガリング)/溶け込み不良/溶落ち

1. 現象と原因:内面酸化(酸化スケール)と溶け込み不良のメカニズム

ステンレス鋼の配管溶接において、管内面を大気開放状態のまま溶接すると、裏面に高温の溶融池が露出した際、大気中の酸素と反応して重度な酸化(酸化スケール/テンパーカラー)が発生します。
また、入熱量が不足すると「溶け込み不良」が生じ、過剰になると「溶落ち」が発生し、いずれも内面の平滑性を損ないます。

2. 工程側で守るべき管理点:バックシールド(パージ)とパルス制御

サニタリー品質を確保するため、工程側での管理点を「段取り」として成立させることが重要です。弊社では、以下の施工管理を徹底しています。

  • バックシールドの徹底:
    管内面(両サイド)を専用治具等で密閉シールし、アルゴンガスをパージします。内部の酸素濃度を規定値以下まで低下させることで、内面の酸化を防止します。
    ※BtoB実務では「規定値以下」という数値だけでなく、“何をもってOK判断するか(測定・手順・確認ポイント)”を発注前に合意しておくと、受入がブレにくくなります。
  • パルスTIG溶接による入熱制御:
    t1.5mmという薄肉鋼管に対しては、パルス電流を用いたTIG溶接を採用します。ベース電流でアークを維持しつつ、ピーク電流で瞬間的に溶融させることで、過大な入熱による歪みや溶落ちを防ぎ、均一な裏波ビード(完全溶け込み)を形成します。

3. 設計側が決めるべき仕様(優先順位)

図面指示の段階で、受入基準につながる項目を先に確定すると、手戻りが減り、品質保証も設計意図に沿って運用できます。最低限、以下の3点は優先して明記すると効果が大きいです。

  • 溶接規格と接合要件:完全溶け込み(裏波)溶接の要否
  • 内面仕上げレベル:溶接のまま(バックシールドあり)、または内面研磨の要否
  • 検査基準:気密試験、PT(浸透探傷試験)、RT(放射線透過試験)などの指定

図面がある加工案件でしたら、可否・概算・納期の方向性を先に整理できます。

PDF図面または写真(全体+溶接部アップ)を添えてご相談ください。

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【施工事例】ステンレス配管(2.0S)の緊急溶接対応

研究所の実験ライン等で用いられる小径サニタリー配管の製作事例です。緊急の配管工事として、溶接式ヘルール2個とエルボ2個の構成を短納期で製作しました。

材質・規格 ステンレス鋼(SUS304等)、50.8mm 2.0S
板厚 t1.5mm
溶接プロセス TIG溶接(パルス制御)
シールドガス管理 トーチ側:純アルゴン / 内面側:バックシールド(純アルゴンパージ)
品質保証・検査 完全溶け込み(裏波)要件に基づき外観確認を実施し、要求仕様(必要に応じたPT等の指定)に沿って確認のうえ納品

参考:サニタリー継手に関する規格・寸法等は、メーカーカタログ等もご参照ください。(例:
大阪サニタリー株式会社様

サニタリー配管(50.8mm 2.0S)の裏波溶接事例。バックシールドで内面酸化を抑え、完全溶け込みを成立させたTIG溶接部

サニタリー配管(50.8mm 2.0S)で完全溶け込み(裏波)を成立させたTIG溶接例。バックシールドにより内面酸化(酸化スケール)を抑え、受入基準につながる内面品質を確保します。

検査・受入の考え方(よくあるご質問)

Q. 内面酸化(酸化スケール/テンパーカラー)は、なぜ受入不適合になりやすいのですか?

サニタリー用途では、内面の平滑性と洗浄性が品質の前提となります。内面酸化やスケールは、液溜まり・洗浄性低下・コンタミリスクの懸念につながりやすいため、受入基準として問題視されやすいです。

Q. バックシールド(パージ)は「どこまで管理」すべきですか?

本文で触れた通り、内面酸化を抑えるためにパージは重要です。BtoB実務では、酸素濃度のような数値そのものよりも、密閉・置換・維持を工程として成立させ、何をもってOKと判断するか(手順・確認ポイント)を発注前に合意しておくと、受入がブレにくくなります。

Q. 内面の裏波ビードの高さは指定できますか?

TIG溶接の特性上、完全なフラットにはなりませんが、パルス制御によりビードの凸量を最小限に抑えるコントロールが可能です。よりシビアな流体抵抗や内面仕上げが求められる場合は、溶接後の内面研磨処理の追加をご検討ください。

Q. 溶接欠陥試験の成績書は発行可能ですか?

可能です。要求される試験規格(PT等)に基づき、社内での検査記録、または外部検査機関による証明書を発行できます。ご発注時に要求仕様としてご提示ください。

Q. 図面指示で最低限、何を書けば手戻りが減りますか?

まずは①完全溶け込み(裏波)要否②内面仕上げ(溶接のまま/研磨要否)③検査基準(気密・PT・RT等)の3点を優先して確定すると、発注・工程・受入が揃いやすくなります。

著作権及び免責事項

本記事は一般的な技術情報と現場知見に基づく解説です。最適条件は、材質・板厚・形状・拘束条件・要求品質・検査条件により変動します。安全対策(換気・保護具等)を徹底し、必要に応じて専門家へご相談ください。

詳細は 「免責事項」ページ をご確認ください。
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図面がある加工案件でしたら、可否・概算・納期の方向性を先に整理できます。
まずは図面(PDF)または写真をお送りください。

  • 材質・板厚・数量(分かる範囲でOK)
  • 要求精度・用途(気密/歪み管理など)
  • 希望納期(確定でなくてもOK)

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溶接管理技術者1級
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