溶接管理技術者経営ブログ

【京都銀行 2026新春経済講演会】伴走支援と日本経済の展望、幸せの企画術から学んだこと

【京都銀行 2026新春経済講演会】伴走支援と日本経済の展望、幸せの企画術から学んだこと

ものづくりだより525号
おはようございます。溶接管理技術者の上村昌也です。

先日、みやこめっせで開催された京都銀行様主催の「2026年新春経済講演会」に参加してきました。

安井京都銀行頭取のご挨拶ののち、講演第一部は「2026年 日本経済の展望」として東京大学名誉教授 伊藤元重氏、講演第二部は「幸せの企画術」として放送作家・脚本家/京都芸術大学副学長/下鴨茶寮主人 小山薫堂氏のお話で始まりました。


安井頭取のご挨拶で印象に残った「伴走支援」

安井頭取のお話の中で、特に印象に残った言葉があります。
それが「経営課題に寄り添う伴走支援」です。

会場参加が6割、Web視聴が4割という参加スタイルの話も出ていましたが、こういうところにも“時代の変化”がそのまま表れています。仕事の進め方も、情報の取り方も、数年前とは別物になってきています。

その中で、私が強く感じたポイントは大きく2つです。

不透明な時代ほど「一緒に考える相手」が重要になる

先が読めない時代は、どうしても判断が難しくなります。
だからこそ、ただ資金やサービスを提供するだけではなく、状況整理から打ち手まで「一緒に考える」関係が価値になる、というメッセージだと受け取りました。

“伴走”という言葉が、まさにしっくり来ました。


講演第一部 東京大学名誉教授 伊藤元重氏

伊藤元重先生が説く「失われた所得」の正体と「高市政権」の産業政策:インフレが告げる日本経済の反転攻勢

「2026年新春経済講演会」の第一部、東大名誉教授・伊藤元重先生の講演は、目から鱗が落ちるような、これからの日本経済に対する「希望」と「警告」に満ちた内容でした。伊藤先生は、過去20年間のグローバル経済を振り返り、今まさに「ゲームのルールが完全に変わった」と指摘されました。今日はその詳細と、私たち製造業がどう動くべきかを共有します。

1. 「2001年モデル」の崩壊とサプライチェーンの見直し

まず、過去20年間の世界経済の成功パターンを振り返られました。2001年の中国WTO加盟以降、「米国が開発し、日本・韓国が部品を作り、中国が組み立てる」という国際分業体制が確立され、世界は急速に成長しました。

しかし今、トランプ政権の影響や安全保障の観点から、このサプライチェーンの見直しが始まっています。これまでの「常識」だった国際分業が崩れ、特定の国に依存しない体制づくりが急務となっています。これは、私たち日本の製造業にとって「国内回帰」の大きなチャンスでもあります。

2. この20年の真実:株価は上がったが、国民所得は増えなかった

先生は、日本経済が抱えてきた長年の「歪み」について、痛烈な事実を提示されました。

「この20年、株価や企業収益は上がった。しかし、国民所得は増えなかった」

なぜか?それは、企業が儲けたお金の使い道に原因がありました。これまでの日本企業は、成長が見込める「海外投資」には積極的でしたが、国内に関しては現状維持のための「設備更新」程度しか行ってこなかったのです。これでは、国内の生産性も賃金も上がるはずがありません。

日本経済の真の回復を実現するためには、海外頼みではなく、「安定的な国内投資」へと舵を切る必要があります。

3. 「デフレの罠」と「実質金利」:なぜ今、投資が必要なのか

では、なぜこれまで国内投資が進まなかったのでしょうか。伊藤先生は、その原因として「デフレの罠」を挙げられました。物価が上がらない時代は、金利を下げても限界があり、投資意欲が湧かない「安定と停滞」の状態に陥っていたのです。

しかし、この「デフレの罠」から抜けた今、重要になるのが「実質金利」の変化です。

実質金利 = 名目金利 - 物価上昇率

現在の日本は、名目金利の上昇よりも物価上昇のスピードの方が早いため、この式に当てはめると「実質金利はマイナス」になっています。つまり、実質的なお金の価値が目減りしていくインフレ下では、現金をただ持っているよりも、借入をしてでも設備投資を行い、モノや技術に変える方が合理的なのです。

4. 「高市政権」による産業政策と政府の関与

さらに、投資を後押しする政治的な変化についても触れられました。

「高市政権により、今後は政府が関与して投資をしていく『産業政策』が全面に出てくる」

これまでのように市場任せにするのではなく、国がリーダーシップをとって国内投資を支援・牽引していく。この政府の方針転換は、私たち中小製造業が設備投資に踏み切るための、非常に強力なエビデンス(後ろ盾)となります。

また、伊藤先生は賃金上昇が続く理由として以下の3つを挙げられました。

  • 構造的な人手不足
  • 物価上昇による賃上げ圧力
  • 諸外国と比べて低すぎる賃金の是正

実際、ニューヨークの最低賃金は時給16.5ドル(約2,500円相当)に達しています。自国通貨建てで賃上げができていないのは日本だけであり、「安すぎる賃金」は今後必ず上がっていきます。

5. 価格引き上げは「社長の問題」である

ここで引用された、日本製鉄・橋本氏の言葉が強烈でした。

「価格を引き上げるのは営業の問題ではなく、経営の問題。すなわち、社長の問題である」

付加価値を高めるための投資を行い、それに見合う価格を社長自らが決定する。そうして得た利益を、賃上げと次の「国内投資」に回す。このサイクルを回せる企業だけが生き残ります。

【上村製作所としての決意】伊藤先生は最後に、こう断言して講演を締めくくられました。

「インフレなので、良いことが多くなる」

これは、デフレマインド(安売り・現状維持)からの完全な決別宣言です。物価上昇をネガティブに捉えるのではなく、それが賃金上昇や国内投資へと繋がる「好循環の始まり」であると捉えること。

私たち上村製作所も、高市政権による産業政策という追い風を受け、航空・宇宙分野などの難加工に対応する技術力(付加価値)をさらに磨き、積極的な国内設備投資と人材育成を加速させます。

「価格以上の価値がある」と胸を張って言える仕事を、これからもご提供し続けてまいります。


第二部『幸せの企画術』 放送作家 脚本家 京都芸術大学副学長 下鴨茶寮主人 小山薫堂氏

「小山くん、どう?」から始まる企画の原点:上村製作所が大切にする「問い」と「思いやり」

京都銀行様主催の講演会、第2部は放送作家の小山薫堂氏による、仕事と人生の本質を突く素晴らしい時間でした。「くまモン」や映画「おくりびと」、そして2025年大阪・関西万博など、小山氏が手掛ける数々の伝説的な企画。その裏側にあったのは、徹底した「他者への想い」でした。

今日は、私たち製造業の人間こそ胸に刻むべき、小山氏の「仕事の哲学」を共有します。

1. 「小山くん、どう?」から始まった企画人生

小山さんは、学生時代に「11PM」の企画に携わったことが、企画人生の原点だとお話しされていました。

私も昔よく見ていた11PMなので、「あの番組の現場から始まっているのか」と、ぐっと引き込まれました。

冒頭、小山氏は「小山薫堂(くんどう)」というご自身のお名前について触れられました。周囲から常に「小山くん、これどう?」「小山くん、どう?」と意見を求められることからついた……というのは冗談で、実は本名なのですが、このエピソードが小山氏の生き方を象徴しています。

常に人から「どう?」と問われ、それに最善の答えを出し続ける。この姿勢は、私たち上村製作所にも通じます。私たちも、お客様から「この難加工、どうすればいい?」「上村さんならどうする?」と問われる存在でありたい。その問いに対して、技術でお応えすることが私たちの使命だと強く感じました。

2. 絶体絶命の危機を救った「思いやり」の企画力

小山氏は「場所こそ最高のメディア」と仰います。その言葉通り、愛する京都の古民家を改装し「1日1組限定のフェンディのホテルを作る」という企画を立案されました。しかし、本国のフェンディからは「規模が小さすぎる」と却下されてしまいます。すでに家を購入していたため、巨額のキャンセル料が発生する窮地に立たされました。

普通なら諦めて損切りするところですが、小山氏はそこで「万里の長城をランウェイにした、フェンディのファッションショー」という、さらに壮大な企画を提案されたのです。これが見事に採用され、そのプロデュース料でキャンセル料を支払うことができたそうです。

自分のミスを悔やむのではなく、「どうすれば全員が幸せになるか」を考え抜いた結果の逆転劇。「企画=サービス=思いやり」の真髄を見せていただきました。

3. 岡本太郎氏に学ぶ「本質的な価値」と「優しさ」の正体

講演の終盤、小山氏は芸術家・岡本太郎氏の言葉を引き合いに出し、私たちに「価値」のあり方を問いかけました。

「本質的な価値とは、過去に戻り進化することである」 ——岡本太郎

この言葉は、私たち製造業の胸に深く刺さります。1972年の創業以来、私たちが守ってきた技術や伝統(過去)は、単に保存するものではなく、今の時代に合わせて「進化」させて初めて「本質的な価値」になるのだと気付かされました。

そして、小山氏は日本人が本来持っている感性として、「優しさ」についてこう語られました。

「優しさとは、誰かのことをおもんばかること。単にニコニコすることではない。その人に向ける“心”と“眼差し”である」

表面的な愛想の良さではなく、相手を深く思いやる(おもんばかる)静かなる覚悟。

「チャーリー・ヴァイス」: 「副社長にかっこいいスーツを着てほしい」という個人的な思いやりから生まれたブランドであり、三越の社長にバッグを贈ったお話です。さらに「チャーリー・ヴァイスとは“チャラいバイスプレジデント”、すなわち副社長のことです」とユーモアを交えて提案し採用されたお話。

大阪・関西万博: 「いのちを紡ぐ」パビリオン(架空のスーパーマーケット)で問い直される、「いただきます(感謝)」と「ごちそうさま(明日への力)」の意味。

これらはすべて、対象への深い「眼差し」から生まれています。

4. 仕事をする時に問う「3つの条件」

最後に、小山氏が仕事をする時に必ず自問する「3つの問い」を紹介します。

  • その仕事は、新しいか? (New)
  • その仕事は、楽しいか? (Fun)
  • その仕事は、誰を幸せにするか? (Happy)

「優しさ(眼差し)」を持って相手をおもんばかり、過去を進化させて新しい価値を創る。そして誰かを幸せにする。このサイクルこそが、これからの時代に求められる仕事の流儀なのだと確信しました。

【上村製作所としての決意】 「過去に戻り進化する」。私たち上村製作所も、半世紀にわたり培った「板金・溶接」という原点(過去)を大切にしながら、「どうすればお客様の困りごとを解決できるか?」という眼差しを持ち続け、技術を進化させてまいります。

モノづくりのことで「ちょっと聞きたいな」と思われたら、どんな小さなことでもお気軽にお声かけください。私たちは、真剣な心と眼差しで、御社の課題に向き合います。

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