溶接管理技術者経営ブログ

【溶接治具の革命】デメラー3D定盤(D16)で「段取り」を仕組みにした話|座標で精度と再現性を保証する

【溶接治具の革命】デメラー3D定盤(D16)で「段取り」を仕組みにした話|座標で精度と再現性を保証する

ものづくりだより528号(製作事例)
おはようございます。溶接管理技術者の上村昌也です。

「溶接」よりも先に、現場を苦しめるものがあります。
それは、水平・直角・位置決めを出すための“段取り”です。
段取りが属人化すると、品質も納期も、最後は“人”に引っ張られます。
そこで上村製作所では、段取りを勘から座標へ置き換えるために、デメラー3D溶接定盤を導入しました。

突然ですが、皆様は『コンテナ物語』という本をご存知でしょうか。
荷物を「箱(コンテナ)」という規格に統一したことで、物流が速く安くなり、世界の仕組みが変わったという話です。
実はこれと同じことが、町工場の段取りでも起きます。

今回ご紹介するのは、上村製作所における“コンテナ革命”です。
すなわちデメラー(Demmeler)社製 3D溶接定盤(当社はD16)の導入で、段取り・再現性・品質保証がどう変わったのかを、現場と経営の両面から整理します。



よくある課題|「溶接」より先に“段取り”で疲弊していませんか

溶接の現場で、時間を食うのは溶接そのものではありません。
実務では、水平・直角・位置決めを出す段取りが、最も工数を奪います。
そして段取りが長い現場ほど、品質も納期も不安定になります。

  • 担当者が変わると、微妙に寸法が揺れる
  • 角度合わせに時間が溶ける
  • リピート品で「前回の再現」に苦労し、ミスが出る

こうなると最後は「職人の勘で何とかする」に寄ります。
しかし、これは精神論では解決しません。
根本原因は、段取りの基準が曖昧だからです。


原因|なぜ一般的な方法では解決できないのか

問題の根はシンプルです。
基準(原点・座標)がないため、毎回“ゼロから”段取りを組む構造になってしまうのです。

  • 定盤そのものに座標がなく、メジャー計測の手作業が増える
  • 精度が人の集中力・体調に依存し、再現性が揺れる
  • 固定具(ジグ)が規格化されず、毎回「積み木」になりやすい

したがって必要なのは、「頑張って精度を出す」ではありません。
誰がやっても精度が出る仕組み(道具)の導入となります。


解決策|デメラー3D定盤で「座標管理」に切り替える

①【座標の力】精度が“勝手に出る”仕組み

デメラーの盤面は、穴がグリッド状(碁盤の目)に配置されています。
このグリッドを基準にクランプ・アングルを組むことで、直角・水平・位置決めが「努力」ではなく「仕組み」として出せます。
つまり、精度は職人の腕だけでなく、定盤の座標系が支えてくれるようになります。

②【ポカヨケ】物理的な“プログラム”による再現性

一度ジグの位置を決めてしまえば、それは物理的なプログラムです。
2個目も3個目も、部品を置いてクランプするだけで同じ位置に来ます。
メジャー計測が減るため、読み違い・当て方の癖・勘違いなどのヒューマンエラーが物理的に起きにくくなります。

③【時短】段取り時間の削減が“利益”に直結する

溶接仕事の大半は段取りです。
当社の現場感として、ここが一番効きました。
「探す・迷う・直す」が減り、職人が本来の価値である溶接作業に集中できるようになります。


図面不足・仕様未確定でも大丈夫です。
「決める順番」を整理し、割れ・歪み・段取りの論点を見える化します。

写真(全体+アップ)と、困っている症状だけでもOKです。

上村製作所が「D16」を選んだ理由|精密部品×機動力の最適解

上村製作所が導入した規格はD16です。
理由は、当社の仕事(精密部品・治具・板金溶接)に対して、サイズと機動力のバランスが最も良いからです。

また、当社の運用上の整理では、D16およびD22はグリッド(穴ピッチ)が50×50mmで、細かい位置決めの自由度が現場に合います。
一方でD28は100×100mmとなり、固定点の取り方が大きく変わります。

  • 手頃なサイズで扱いやすい(段取り替えが速い)
  • 精密部品の位置決め・再現性に使いやすい
  • 軽量で取り回し・レイアウト変更がしやすい(一人現場に効く)

「小さい=剛性が弱い」と思われがちですが、当社の作業範囲ではそうは感じません。
重要なのは“大きさ”ではなく、用途に対して必要な剛性と運用性のバランスです。


当社がD16を選んだ理由(補足)|D22は50グリッド、D28は100グリッド

ここは誤解が出やすいので、当社の運用上の整理として明確に書いておきます。
当社の理解では、D16とD22はグリッド(穴ピッチ)が50×50mmD28は100×100mmです。
したがって、D16とD22の比較は「ピッチの粗さ」ではなく、運用性(扱いやすさ・段取り替えの機動力)や投資バランスの話になります。

D28(100×100mmグリッド)の場合|固定点が「粗くなる」局面がある

D28はグリッドが100×100mmとなるため、当社のように精密部品や比較的小さめの治具が中心の現場では、「固定点が粗くなる」側に出やすい場面がありました。
思った位置にクランプを置きにくい局面が出るため、当社の用途ではD16(50×50mm)の方が段取りを組みやすい、という結論になりました。

D22(50×50mmグリッド)の場合|ピッチではなく「運用の重さ・過不足」を検討する

一方でD22は、当社の整理では50×50mmグリッドです。
したがって、D16との比較ポイントは「ピッチ」ではなく、設備投資の大きさや、日々の扱い勝手(運用の軽さ/段取り替えの機動力)といった要素になります。

当社の仕事レンジでは、まずD16で段取りの標準化(座標管理)を確立し、効果を安定させる判断が合理的でした。
ただし、重量物・長尺ワーク・固定点数が多い治具構成など、作業内容によってはD22やD28が合理的なケースも十分にあります。
導入時は「自社のワークサイズ・重量・求める位置決め自由度・運用体制」に合わせて検討するのが正解です。


D16の50×50mmグリッドを基準に固定点を組むことで、段取りの時間が早くなる様子

D16の50×50mmグリッドを基準に固定点を組むことで、段取りの再現性と位置決め精度を“座標”で担保しやすくなります。


現場のリアル|導入して分かった「注意点」も書いておきます

良いことだけを書いた記事は、現場の方ほど見抜きます。
そこで、導入後に気をつけたい点も正直に整理します。
ここを押さえると、導入効果が安定します。

  • 小物が穴に落ちる:ボルトや小片の置き場(箱・皿)を先に決める
  • スパッタと清掃:使いっぱなしにせず、清掃ルール(週1/月1など)を決める
  • 最初の1回目は慣れが必要:まずはリピート品から始めるとメリットが出やすい

効果測定の型|“体感”ではなく、再現できる記録を残す

設備投資の評価は、印象や気分ではブレます。そこで当社では、段取り改善の効果を「説明できる形」で残すために、案件ごとに最低限の記録を取る方針です。
まずは社内でそのまま使える、簡易テンプレを置きます。

効果測定テンプレ(コピペで運用)

  • 対象ワーク:____(例:フレーム/架台/治具)
  • 工程:段取り → 仮付け → 溶接 → 測定
  • 記録項目:段取り時間(分)/手直し回数(回)/寸法逸脱(有・無)
  • 比較:導入前(従来定盤) vs 導入後(3D定盤)
  • 結果:____(例:段取り__→__、手直し__回→__回 等)

※本記事時点では、数値は未測定です。今後、案件ごとの実測を整理し、根拠が整ったものから追記します。


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よくある質問(FAQ)

Q1. D16/D22/D28で、グリッド(穴ピッチ)はどう違いますか?

当社の運用上の整理では、D16とD22は50×50mm、一方でD28は100×100mmのグリッドになります。ピッチが変わるとクランプ位置の自由度や治具の組み方が変わるため、用途に合う規格選定が重要です。

Q2. なぜ上村製作所はD22/D28ではなくD16を選んだのですか?

当社は精密部品や比較的小さめの治具が多く、位置決めの自由度と取り回しを重視しています。D28の100×100mmピッチは当社の仕事では固定点が粗くなりやすく、思った位置にクランプを置きにくい場面がありました。一方でD22は当社の整理では50×50mmであり、D16との比較はピッチではなく、運用の軽さ(段取り替えの機動力)や仕事レンジに対する過不足の観点になります。そのため、まずは日々の運用に最も回るD16(50×50mm)が現場に合っていました。

Q3. D16は小さい分、剛性不足になりませんか?

当社の結論は「用途次第」です。当社の作業範囲(精密部品・治具・板金溶接)では剛性不足は感じていません。一方で、重量物・長尺ワーク・固定点数が多い構成なら、導入時にD22/D28も含めて検討するのが合理的です。

Q4. 導入コストが高そうですが、費用対効果はありますか?

初期投資は必要です。ただし回収の考え方はシンプルで、削れるのは段取り時間手直し時間です。記事内の「効果測定テンプレ」で実測を積み上げると、投資判断が現場の言葉で説明できるようになります。


なお、当社では段取り(位置決め)の標準化に加え、入熱制御の最適化も組み合わせることで、さらに品質と生産性を引き上げています。こちらは別記事で具体例とともに解説します。

まとめ|町工場の品質保証は「職人」だけで背負わない方が強い

デメラー3D定盤(D16)の導入で、上村製作所の段取りはこう変わりました。
段取りが「勘」から「座標」になり、再現性が上がり、ミスの芽が減りました。
職人の勘は大切です。しかし、品質保証を勘だけに背負わせないことで、現場は強くなります。

図面不足・仕様未確定でも大丈夫です。
「決める順番」を整理し、割れ・歪み・段取りの論点を見える化します。

  • 現状写真(全体+溶接部アップ)
  • 材質・板厚(不明なら推定でもOK)
  • 困っている症状(割れ/歪み/ブローホール等)
  • 求める条件(気密・精度・外観・コスト・納期の優先順位)

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