溶接管理技術者経営ブログ

【プロが解説】S45C(45C)溶接で割れを防ぎ、高精度を実現!必須技術と成功事例

【プロが解説】S45C(45C)溶接で割れを防ぎ、高精度を実現!必須技術と成功事例

ものづくりだより244号
おはようございます。溶接管理技術者の上村昌也です。

S45Cの厚物溶接でお困りではありませんか?
強度と硬度を兼ね備えるS45Cは、各種機械部品に広く使われますが、厚物になるほど溶接割れ熱変形といった課題が発生しやすくなります。

厚さ100mmを超えるS45C鋼板の溶接で、亀裂を防ぐにはどうすればいいのか?
溶接後の変形を最小限に抑え、厳しい公差をクリアしたい
もしあなたがこのようなお悩みを抱えているなら、本記事がお役に立てると思います。

【こんな方におすすめの記事です】
・S45C(45C)厚物の溶接割れに悩んでいる設計・製造担当者の方
・予熱温度や溶接条件がこれで良いか不安な方
・H7クラスなど厳しい寸法公差をクリアしたい方
技術的なご相談は、画像添付でのお問い合わせも可能です。
▶ 技術相談フォームはこちら

1. S45C溶接の基礎知識と割れが起こりやすい理由

S45Cとは、機械構造用炭素鋼の一種で、その強度と硬度から軸・歯車・ピンなど、さまざまな機械部品に使用されています。一方で炭素含有量が多いため、溶接時に硬化組織が生じやすく、割れが発生しやすい材料でもあります。

特に厚物の場合は内部応力が大きくなるため、溶接部や熱影響部に割れが発生しやすくなります。例えば、厚さ100mmを超えるようなS45C鋼板を適切な予熱なしで溶接すると、溶接後の冷却過程で亀裂が生じるリスクが一気に高まります。

2. S45C溶接で割れを防ぎ、高精度を実現するための3つの重要ポイント

S45C溶接で高品質な仕上がりを得るためには、次の3つのポイントが非常に重要です。

  1. 予熱の徹底
    溶接前に母材を200℃程度に予熱することで、溶接後の急激な温度低下を防ぎ、割れのリスクを大幅に低減できます。当社ではガスバーナーなどを用いて母材全体を均一に加熱し、接触型温度計や温度スティックで確認しながら作業を行います。
  2. 低入熱溶接(パルスTIGの活用)
    TIG溶接にパルス制御を組み合わせることで、入熱を抑えつつ必要な溶け込みを確保します。厚板を通常の連続溶接で一気に溶かそうとすると、過剰な入熱で硬化組織や変形を招きやすくなります。パルスTIG溶接を用いることで、熱影響をコントロールしながら安定した溶接が可能になります。
  3. 最適な溶加棒の選定
    材料の特性と使用条件に合わせた溶加棒選定も重要です。強度が求められる場合には神戸製鋼 TG-S80AMを、比較的強度要求が低い場合にはTG-S50といったように、用途に応じて使い分けます。当社では、図面条件や使用環境をヒアリングしたうえで、最適な溶加棒を選定しています。
S45C溶接で使用した神戸製鋼TG-S80AM


今回の溶接で使用した溶加棒は神戸製鋼 TG-S80AM

3. 成功事例:Φ255 厚物S45C溶接で公差±0.04mmを実現

先日、直径Φ255、厚み145mmのS45Cリング溶接のご依頼をいただきました。お客様からのご要望は、中央の穴径がH7公差(±0.04mm)という非常に厳しい条件を満たすこと。溶接割れを防ぎつつ、熱変形も極力抑えなければなりません。

そこで、先ほどの3つのポイントに基づき、200℃予熱パルスTIGによる低入熱溶接TG-S80AMの適用を組み合わせ、熟練作業者が慎重に溶接を行いました。

厚物S45Cの溶接事例(表側)


溶接を行った厚物S45Cリングの表側

厚物S45Cの両面溶接事例


裏側も含め、両面溶接で確実な溶け込みを確保

溶接後は2日間かけて十分な時間を置き、割れの有無や寸法を厳密に確認しました。その結果、割れや変形は一切発生せず、穴径公差も狙い通り±0.04mm以内でクリアすることができました。

お客様からは、「他社では難しいと言われた厳しい公差の溶接を、高い品質で実現していただき大変感謝しています」との評価をいただきました。

4. まとめ:S45C厚物溶接なら上村製作所にご相談ください

S45Cの溶接では、予熱・低入熱・溶加棒選定の3点が品質を左右する重要な要素です。特に厚物S45Cの溶接は、高度な技術と経験が求められますが、適切な条件設定と手順管理を行えば、割れを防ぎつつ高精度な仕上がりを実現できます。

上村製作所では、板金加工・溶接業者として長年培ってきたノウハウを活かし、S45Cをはじめとした高強度材の溶接に数多く取り組んできました。S45C溶接に関するご質問や技術的なご相談、お見積もり依頼がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。

よくある質問(FAQ)

Q1. S45Cと45Cは同じものですか?

はい、同じです。正式には「機械構造用炭素鋼鋼材 S45C」ですが、現場では略して「45C」と呼ばれることもあります。

Q2. S45CのTIG溶接に適した溶加棒はどれですか?

強度を重視する場合は神戸製鋼 TG-S80AM、またはニッコー熔材 NTG-50Rがよく用いられます。用途や熱処理条件に応じて選定します。

Q3. S45Cを溶接すると割れが発生しやすいのはなぜですか?

炭素量が多く硬化組織が生じやすいためです。対策としては200℃前後の予熱低入熱溶接が基本になります。

Q4. 溶接後、数時間〜翌日に割れが出ました。原因と対策は?

残留応力や拡散水素による遅れ割れの可能性があります。後熱処理(応力除去焼なまし)や、事前の乾燥・予熱条件の見直しが有効です。

Q5. SS400とS45Cの異材溶接は可能ですか?

はい、可能です。ただしS45C側に割れが出やすいため、S45C側を十分に予熱し、低入熱で溶接することが重要です。

▶関連記事(S45C溶接の実例・参考資料)


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▼S45C溶接に関するお問い合わせ・ご相談はこちら

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
S45Cや高強度材の溶接でお困りの案件がありましたら、図面・写真ベースでお気軽にご相談ください。

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