産業機械分野

A6061-T6の溶接完全解説|TIG条件・事例・高品質加工法

A6061-T6の溶接完全解説|TIG条件・事例・高品質加工法

ものづくりだより269号
おはようございます。溶接管理技術者の上村昌也です。

【はじめに】熱処理合金A6061溶接の核心に迫る国内事例から学ぶ成功の鍵

この記事では、熱処理合金であるA6061の溶接について、具体的な容器の製作事例を交えながら深く掘り下げて解説します。A6063よりも高い強度を持つA6061は、自動車産業をはじめとする多くの分野で重要な役割を果たしていますが、その溶接には特別な知識と技術が求められます。この記事を通して、A6061の特性を理解し、高品質な溶接を実現するためのヒントを得ていただければ幸いです。私たちが実際に経験した貴重な知見を共有することで、読者の皆様の業務に少しでもお役立てできればと考えています。

【A6061とは?】その優れた特性と幅広い用途ものづくりを支える素材の魅力

A6061は、アルミニウムにマグネシウムとシリコンを添加した合金で、その最大の特徴は熱処理によって強度を向上させることができる点です。この特性により、航空機の構造材や自動車部品、さらにはスポーツ用品に至るまで、高い強度と信頼性が求められる様々な分野で広く採用されています。

  • A6063を凌駕する強度:より過酷な環境下での使用に適しています。
  • 優れた溶接性:適切な方法を用いることで、高品質な接合が可能です。
  • 高い耐食性:様々な環境下でその性能を維持することができます。

【A6061溶接の難しさ】熱処理材特有の課題と克服すべきポイント技術者の視点

A6061は熱処理された材料であるため、溶接時の熱が材料に与える影響を考慮する必要があります。不適切な溶接は、溶接部の強度低下や、予期せぬ変形を引き起こす可能性があります。そのため、最適な溶接方法と条件を選定し、熟練した技術者が丁寧に作業を行うことが不可欠です。

  • 熱影響による強度低下:溶接熱により、材料本来の強度が損なわれる可能性があります。
  • 溶接後の変形:熱による収縮などが原因で、製品の形状が変化することがあります。
  • 適切な溶接条件の選定:材料の特性に合わせた電流値や速度などを細かく調整する必要があります。

【A6061容器の製作事例】高品質を実現した当社の技術力具体的なデータで裏付け

今回、お客様のご要望に基づき、A6061製の特殊容器を製作いたしました。以下に、使用した材料と実際の溶接条件の詳細を示します。

  • 材料:A6061 板厚15mm サイズ550mm × 650mm × 185mm(輸入材)
  • 溶接方法:TIG溶接(交流)
  • 電源装置:Panasonic YC-300BP4
  • 溶接電流:200A
  • 交流周波数:200Hz
  • 溶加棒:A5356BY φ2.4, 3.2
  • 電極:純タングステン φ3.2
  • シールドガス:He-Ar(ヘリウム-アルゴン混合ガス)
  • 予熱:100℃

この事例では、事前の詳細な検討と、長年の経験に基づいた最適な溶接条件の設定により、お客様の要求を満たす高品質なA6061製容器を完成させることができました。

【A6061溶接を成功させるための重要ポイント】プロが語る秘訣品質向上のために

A6061の溶接で高品質な結果を得るためには、いくつかの重要なポイントがあります。

  • 予熱:JISハンドブックではA6061への予熱は推奨されていませんが、今回の事例では、材料の状態を考慮し、歪みを抑制するために100℃以下の予熱を実施しました。
  • 溶加棒の選定:母材であるA6061との適合性を考慮し、適切な溶加棒(A5356など)を選定することが重要です。
  • シールドガス:He-Ar混合ガスを使用することで、アークの安定性を高め、溶け込み不良を防ぎ、美しい仕上がりを実現することができます。

    A6061は溶接だけでなく、曲げ加工でひび割れが起きやすい難材です。
    その対策や失敗しない方法については、当社の
    A6061曲げ加工マスターページ で詳しく解説しています。ぜひご覧ください。


    【自動車業界におけるアルミ材料の可能性:軽量化への貢献】


    自動車業界において、Al-Mg-Si(6000系)合金は、熱処理型で中強度・高成形性を持ち、溶接性にも優れた材料として注目されています。特にA6016は、焼き付け塗装時の熱で降伏点が上昇するベークハード性(BH性)を有しており、プレス時には延性を保ちながら成形できる点が大きな特長です。現在、市場への流通量はまだ少ないものの、自動車のボディパネルなどに広く使用され始めています。実際、初代NSXではパネルアウターにBH性の高い6000系材料が開発・使用され、インナー材には成形性に優れたA5052 O材が採用されていました。近年ではEV化に伴い軽量化の重要性が増し、自動車メーカーからA6000系材料に関する成形・溶接の相談が増加しています。アルミは柔らかい一方で成形時に脆くなる傾向があるため、加工後に強度を高められる時効硬化型合金は理想的であり、A6016はまさにその要件を満たす最適な材料だと考えられます。

【まとめ】A6061溶接は私たちにお任せください高度な技術でお客様のビジネスに貢献します

A6061の溶接は、専門的な知識と熟練した技術が不可欠です。当社では、A6061をはじめとする様々な特殊材料の溶接に対応しており、お客様のニーズに合わせて最適なソリューションをご提供いたします。高度な溶接技術と豊富な経験を活かし、高品質な製品をお届けすることで、お客様のビジネスの発展に貢献できると確信しております。溶接に関するご相談やご依頼は、どうぞお気軽にお問い合わせください。

 

熱処理合金A6061溶接のやりかた

気密溶接が必要だったためにPTにて確認中

熱処理合金A6061溶接のやりかた

現像結果、溶接欠陥なしの合格

A6061

溶接加工画像です。熟練の技術者が、A6061-T6材の特性に合わせた精密なTIG溶接を行っています。美しい溶接ビードが、高品質な溶接の証です。

初代HONDA NSX オールアルミに車体

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HONDA NSX

流線型で美しいシルエット

 

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