【特殊材料溶接技術百科】S45C・SCM440等の溶接割れ原因と対策を徹底解説
溶接百科シリーズ|特殊鋼編
おはようございます。株式会社上村製作所、溶接管理技術者の上村昌也です。
「S45Cを溶接したら、冷却後にパキンと割れる音がした…」
「SCM440で肉盛り補修をした数日後に、予期せぬクラックが入っていた」
このようなトラブルは、特殊鋼(機械構造用炭素鋼・クロムモリブデン鋼など)を扱う現場では頻発する重大な課題です。
本記事では、機械部品や金型に多用されるS45C・SCM材・工具鋼など、
「溶接困難」とされる鋼材の溶接課題について、科学的根拠に基づく原因と、弊社が実践する対策・事例を解説します。
よくある課題|特殊鋼部品の溶接で起きる「3つの失敗」
機械設計者や設備保全担当者様から、以下のようなご相談が後を絶ちません。
- ビード横のクラック: 溶接直後、または冷却中に「熱影響部(HAZ)」から割れが発生する。
- 遅れ割れ(低温割れ): 施工時は問題なかったが、数日経過してから割れが生じる。
- 肉盛り部の剥離・硬化: SCM440等の合金鋼補修で、母材との馴染みが悪く剥離したり、極端に硬化して加工できなくなる。
これらは市販の汎用溶接機や一般的な軟鋼用材料では防ぐことが難しく、材料特性(炭素当量)に応じた厳密な温度管理が必要になります。
原因|なぜS45CやSCMは溶接トラブルが起きやすいのか
S45CやSCMなどの「高炭素系材料」には、溶接熱によって金属組織が変化するリスクがあります。
- 硬化組織(マルテンサイト)の生成: 炭素量が多いため、溶接後の急冷でガラスのように硬く脆い組織に変質しやすい。
- 冷却時の収縮応力: 局部的な加熱と急激な冷却により、内部に応力が溜まりクラックを引き起こす。
- 拡散性水素による影響: 溶接金属中に水素が入り込み、時間経過とともに「遅れ割れ」を誘発する。
表面的な溶接作業だけでは再発のリスクが高く、「予熱・後熱・層間温度」の3大熱管理が不可欠です。
解決策|上村製作所が実践する3つの施工ポイント
① 予熱・後熱・層間温度の厳格な管理
S45CやSCM材の溶接において、弊社では板厚や炭素当量に基づき200℃〜350℃程度の予熱を実施します。
これにより冷却速度を緩和し、硬化組織の生成を抑制します。また、溶接後も即座に冷やさず、徐冷を行うことで残留応力を除去します。
② 低水素系溶接棒・フィラーの選定
弊社では精密なTIG溶接を主力としていますが、現場補修などで被覆アーク溶接を行う場合は、必ず低水素系溶接棒(JIS規格:E7016 / E7018等)を選定します。
これはブローホールや遅れ割れの主原因となる水素の侵入を防ぐためです。当然、使用前の溶接棒乾燥管理も徹底しています。
③ 材料成分・用途に応じた最適な肉盛り設計
SCMや金型鋼などの高硬度材料への肉盛りは、母材と同じ成分だけでなく、
「バッファー層(クッション層)」として割れにくい材料を一層目に入れるなど、多層盛りやインターバル冷却を駆使した高度な施工を行います。
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特殊鋼溶接のよくある質問(FAQ)
Q1. S45Cは普通の鉄(SS400など)と同じように溶接できますか?
いいえ、できません。SS400に比べ炭素量が多く、そのまま溶接すると冷却時に割れる可能性が非常に高いです。適切な予熱・後熱処理が必須となります。
Q2. 図面がなくても相談できますか?
はい、対応可能です。現物の写真や手書きのポンチ絵、破損状況の説明だけでも、最適な補修・製作方法をご提案します。LINEでの画像送付も便利です。
Q3. SCM440のシャフト摩耗部の肉盛りは可能ですか?
はい、多数の実績がございます。耐摩耗性を重視した硬化肉盛りや、後加工を考慮した材料選定など、用途に合わせて施工いたします。
【免責事項】
本ページの内容は、株式会社上村製作所の実際の製作・溶接実績および一般的な技術文献をもとに構成していますが、
お客様の個別の使用環境・条件において、同様の品質・結果を完全に保証するものではありません。
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