溶接の歪み・変形を克服!プロが教える対策と矯正法【2025年最新版】

溶接の歪み・変形を克服!プロが教える対策と矯正法【2025年最新版】

「溶接すると、どうしても歪んでしまう…」
そんな悩みを抱える溶接士・板金技術者・設計者の方へ。
本記事では、溶接時に発生する歪み・変形の原因から、具体的な防止対策、そして矯正方法(歪み取り)まで、プロの視点で分かりやすく解説します。

【この記事はこんな方におすすめです】
・溶接すると毎回歪みが大きく、後工程で苦労している
・設計段階で歪みを見込んだ設計にしたいが、考え方が分からない
・治具や段取りを見直して、量産時のバラツキを抑えたい
歪み対策・治具製作についてのご相談も承っています。
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溶接歪みとは?原因を分かりやすく解説

溶接歪みとは、溶接時の局部的な加熱と冷却によって材料が膨張・収縮し、最終的に形状が変化してしまう現象を指します。
見た目がわずかな変形でも、組立精度やシール性、動作性に大きな影響を与えることがあります。

「なぜ溶接構造物は歪むのか?」
その主な要因は、次の4つに整理できます。

1. 材料特性

材料の種類(SS・SUS・アルミ・チタンなど)によって、線膨張係数熱伝導率が異なります。
例えば、ステンレス鋼(SUS304)は軟鋼(SS・SPCCなど)に比べて線膨張係数が約1.5倍と大きく、同じ条件で溶接すると変形が大きく出やすい材料です。
材質ごとの性質を理解したうえで条件設定を行うことが重要です。

2. 溶接方法

アーク溶接、TIG、MAG、レーザーなど、溶接方法によって入熱量熱分布が大きく変わります。
板厚や開先形状に対して過大な入熱となると、歪み・変形は一気に増加します。
「できるだけ低入熱な工法を選択する」ことが歪み抑制の基本です。

3. 溶接順序

どの位置から溶接を始め、どの順番で進めるかも、歪み発生に大きく影響します。
一般的には、中央部から自由端に向かって溶接を進めることで、全体としての変形を分散させることができます。
長尺物や枠物では、「対称に少しずつ進める」などの工夫も有効です。

4. 拘束条件(治具・クランプ)

治具やクランプで構造物を拘束することで、溶接中の変形を抑えることができます。
ただし、拘束が強すぎると溶接部に大きな残留応力が残り、溶接割れのリスクを高める場合もあります。
「どこを固定し、どこを動かせるようにするか」という設計が非常に重要です。

今日からできる溶接歪み防止対策

「具体的に、何を見直せば歪みを減らせるのか?」
現場で実践しやすい対策を、ポイントごとに整理しました。

  1. 材料・形状に合った溶接方法を選ぶ
    板厚・材質・要求精度に応じて、TIG・MAG・レーザーなど最適な方法を選択します。
    必要以上の入熱となっていないか、条件を見直すだけでも歪みは変わります。
  2. 板金なら、溶接箇所そのものを減らす設計にする
    曲げ加工やロール成形を活用し、「つなぎ合わせる」長さを短くすることで、歪みの元を減らすことができます。
    設計段階での工夫が、最も効果の高い歪み対策です。
  3. 溶接入熱をできるだけ小さくする
    パルス制御やウィービングの見直しなどで、必要最小限の入熱に抑えます。
    予熱・後熱の有無も含め、トータルで熱履歴を管理することが大切です。
  4. 溶接順序を工夫する(中央から自由端へ)
    長手方向に一方向で一気に進めると、歪みが片側に集中しがちです。
    中央から左右へ、対称に少しずつ進めるなど、変形が分散するシーケンスを設計します。
  5. 逆歪み法(あらかじめ反らせておく)を活用する
    あらかじめ反対側に少し“曲げ”を持たせておき、溶接後に狙い形状へ戻す方法です。
    経験に基づくノウハウが必要ですが、量産品では大きな効果があります。
  6. 治具などで適切に拘束する
    必要な位置だけを押さえ、不要な拘束は避ける「メリハリのある拘束」がポイントです。
    強く固定すれば良いというものではなく、逃がし方も含めた治具設計が重要です。
  7. 溶接箇所の隙間をできるだけ小さくする
    開先やギャップが大きいと、溶着量が増え、その分入熱も増加します。
    組立段階での精度管理が、歪み低減にも直結します。

これらの対策を複数組み合わせることで、溶接歪み・変形を大幅に軽減できます。

溶接変形矯正法(歪み取り):万が一のときの対処

「それでも歪んでしまった…」という場合でも、まだ手はあります。
代表的な歪み取り方法を2つご紹介します。

  • 機械的矯正法
    プレス矯正やピーニング(ハンマリング)など、外力を加えて変形を戻す方法です。
    材料や形状によっては、部分的に打診することで微調整することもできます。
  • 局部加熱急冷法
    ガスバーナーなどで局部的に加熱し、その後急冷することで収縮させる方法です。
    関西では「やいと」と呼ばれることもあります。
    経験が必要ですが、うまく使うと効率的に歪みを修正できます。

3Dクランピングシステムで、さらに歪みを低減

「もっと効率的に歪みを抑えたい」という場合には、3Dクランピングシステムも有効です。
精密定盤とクランプシステムを組み合わせることで、上下左右から適切に拘束し、溶接変形を大幅に低減できます。

特に、角変形・座屈変形などが問題となる大型構造物では、
「どこを固定し、どこを逃がすか」を3Dテーブル上で再現できるため、
逆歪みを織り込んだ高度な歪み管理が可能になります。

3Dテーブル輸入元:テンポス様(外部サイト)


http://www.tempos.tokyo/demmeler_table.html

上村製作所の取り組み:治具設計から歪み管理まで一貫対応

溶接歪み防止はDIYの工夫でもある程度は改善できますが、量産品や精密部品になると、治具・段取り・条件設定の有無で仕上がりが大きく変わります。

上村製作所では、対象製品の形状・精度要求に合わせて専用治具を設計・製作し、溶接中の熱変形を抑制します。
さらに、溶接条件の最適化から仕上げ・検査まで一貫対応することで、歪みを最小限に抑えた高品質な溶接を提供しています。

溶接歪み取り・治具製作の外注先をお探しの方へ
試作1個から全国対応。まずはLINEまたはお問い合わせフォームからご相談ください。

図面・写真ベースでのご相談も歓迎です。
現状の歪み状況やお困りごとを教えていただければ、対策の方向性をご提案します。


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