【ステンレス溶接の完全ガイド】割れ・腐食・歪みを防ぐ実践ノウハウと溶接法まとめ

【ステンレス溶接の完全ガイド】割れ・腐食・歪みを防ぐ実践ノウハウと溶接法まとめ

ステンレス鋼は、その美しい外観と優れた耐食性から、多くの産業分野で使用されています。しかし、溶接時にはステンレス特有の「割れ・腐食・鋭敏化・歪み」などの問題が発生しやすく、適切な対策が不可欠です。本記事では、学会資料・専門文献をもとに、ステンレス鋼溶接の注意点と歪み防止策を体系的に解説します。


オーステナイト系ステンレス鋼の溶接性

オーステナイト系ステンレス鋼(例:SUS304、SUS316L)は比較的溶接しやすい材料ですが、溶接条件次第では以下の欠陥が発生します。

  • 高温割れ(凝固割れ)
  • 腐食(不動態皮膜破壊)
  • 応力腐食割れ(SCC)
  • 熱影響部鋭敏化

(1) 高温割れ(凝固割れ)

溶接収縮により縦割れやクレータ割れが発生。P・Sの含有量が多いほど割れ感受性が増加。フェライト量の確保が割れ低減の鍵となります。

(2) 腐食

ステンレス鋼の耐食性はCr含有による「不動態皮膜」で維持されます。溶接による酸化・熱影響で皮膜が破壊されると腐食の進行が早まります。

(3) 応力腐食割れ(SCC)

SCCは材料・環境・応力の3条件が揃うと発生します。活性溶解型(APC)と水素脆化型(HE)が代表的なメカニズムです。

(4) 熱影響部の鋭敏化

500〜850℃域でCr炭化物が粒界に析出し、粒界腐食を引き起こします。低炭素鋼(304L/316L)や安定化鋼(321/347)の使用が有効です。


ステンレス鋼の代表的な溶接法

ティグ溶接(GTAW)

美観が要求されるステンレス製品に最適。ただし入熱が増えやすく歪みが発生しやすい点が課題。

薄板歪み対策:

  • 銅板バッキング
  • 局部冷却
  • 高速パルス
  • 水素混合ガスで速度向上

その他の溶接法

GMAW(MAG/MIG)、スポット溶接、ろう付け、YAGレーザなど。目的と板厚に応じて選択が必要。


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よくある質問(FAQ)

Q. ステンレス溶接で最も多い欠陥は何ですか?

A. 高温割れ・鋭敏化・腐食が代表的です。特に薄板では歪みの発生が多く、入熱管理が重要です。

Q. SUS304とSUS316Lの溶接性はどう違いますか?

A. SUS316Lは低炭素・モリブデン添加により、SUS304よりも腐食・鋭敏化に強く、溶接後の耐食性が安定します。

Q. 薄板ステンレスの歪みを抑えるには?

A. 高速パルス・銅バッキング・局部冷却など、入熱を下げる工夫が有効です。

Q. 溶接後の腐食を防ぐ方法はありますか?

A. 酸洗い・パスivation処理・低炭素鋼の使用などで耐食性を回復できます。


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