ステンレス鋼、溶接時の注意点につきまして

08.27.2020 更新

ステンレス鋼の溶接時の注意点や歪防止策に
つきましてご案内させて頂きます。
学会の講習会に参加した資料や、文献を参考にしています。

 

オーステナイト系ステンレス鋼の溶接性

炭素鋼のように比較的容易に溶接を行うことができます。
しかし溶接時に高温割れ(凝固割れ)や腐食環境に
よっては粒界腐食、応力腐食割れ(SCC)などが
発生する。

(1)高温割れ

オーステナイト系ステンレス鋼の溶接時に発生する
割れに多いのが高温割れ(凝固割れ)である。

原因として考えられるのが溶接収縮歪みが発生する
からである。割れの形態として縦割れやクレータ割れ
などである。溶接金属の高温割れに及ぼす溶接金属中
の(Pリン+S硫黄)量とフェライト量のとの関係があり(P+S)
量の増加とともに高温割れ感受性は高くなるがフェライト量
が多くなると高温割れは発生しなくなる。

オーステナイト系ステンレス鋼溶接金属の凝固割れ感受性は、
フェライト量と密接な関係があるみたいです。

 

(2)腐食

一般的にはステンレスは腐食しにくいと認識があるみたい
ですが、それには訳があるのですね。約12%以上Crを
含むステンレス鋼は腐食環境下で優れた耐食性を示す。

 

これはCrが腐食環境下で酸化しさらに水と反応して緻密な
水酸基皮膜を形成することで、それ以上の腐食の進行を
阻止するためである。この膜は不動態皮膜と呼ばれ
ステンレス鋼の耐食性の根元となっている。

 

(3)応力腐食割れ(SCC)

応力腐食割れには次の3つの条件が満たされた場合に生じる現象である。

材料(鋭敏化、不純物等)
環境(温度、塩化物等)
応力(残留応力、外部応力等)

応力腐食割れの分別としましてはアノード溶解によって割れが
進行する活性溶解型(APC)と腐食反応によって生じた水素が
支配要因となる水素脆化型(HE)に大別される。なお狭義の
応力腐食割れは活性溶解型のみを指す。


(4)熱影響部の鋭敏化

溶接熱影響部は1000℃以上に加熱された溶体化部と
500~850℃程度に加熱された炭化物析出部に分けられます。

 

炭化物析出部では、オーステナイト粒界にCr炭化物が析出し、
粒界近傍のCr固溶濃度が低下するため、粒界腐食をおこしやすくなる。

 

このようにCr炭化物が析出し、粒界腐食感受性が増す現象を鋭敏化という。
腐食環境中では、この部分にウエルドディケイと呼ばれる溝状腐食を
生ずることがある。

 

鋭敏化を防止策

①溶接方法ならびに溶接条件の適正な選定により溶接入熱を小さくするか、
あるいは水冷しながら溶接しCr炭化物が析出しやすい鋭敏化温度域
500~850℃)の冷却速度を速くする。

②0.03%C以下の低炭素ステンレス鋼(SUS304L、SUS316Lなど)を使用する。
③Ti、Nbなどを添加した安定化ステンレス鋼(SUS321、SUS347)を使用する。
④粒界析出を起こした材料は溶接後、炭化物を固溶させるため固溶化処理
(1000~1100℃加熱後急冷)を施す。


溶接分類

代表的なオーステナイト系ステンレス鋼SUS304を取り上げます。
溶接法の分類としましては、GTAW(ティグ溶接)、
GMAW(マグ溶接、ミグ溶接)、ロー付け、はんだ付け、

スポット溶接、YAGレーザ溶接があります。

Tig溶接

溶接性は非常によくティグ溶接の場合精度よく高品質な接合部を
成形できるアーク溶接です。とくに溶接部の美観が必要とされる
ステンレス製品が多く、ティグ溶接なら高品質な溶接が可能である。

しかしながら欠点として溶接速度が遅く、溶け込みが浅い等の
欠点もある。当然溶接速度が遅いと溶接入熱が多くなり、
溶接変形などの問題も生じる。


薄板の歪み防止策としましては(Tig溶接場合)

・銅板等でバッキングをする
・溶接近傍を冷却する
・高速パルスを利用する
・水素含有のシールドガスを使用し溶接速度を速める

最近ではステンレス鋼の深溶け込み溶接法として2重シールドトーチを
採用して外側に特殊酸化性ガス内側に不活性ガスを使用したAA-TIG溶接法も
実用化されている。弊社としましても非常に採用したい技術である為、
溶接学会等での情報を精査中である。

 

『参考文献』 溶接・接合技術持論 ステンレス鋼溶接トラブル事例集

 

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