【チタン溶接】板厚1mm vs 20mm|異厚突き合わせを「運」ではなく「論理」で攻略する
結果を決めるのは「条件」と「段取り」です。
そして、その段取りは“論理”で再現できます。
板厚1mmと20mm。
同じチタンでも、熱容量は別物です。
この厚み差を「勘」で渡ると、高価な材料は簡単にスクラップになります。
今回は、研究開発機関向けに対応した【チタン製・異厚気密容器】について、
板厚1mmと20mmという極端な厚み差をいかに克服し、PT(浸透探傷試験)合格レベルの気密溶接にまとめたか、
“再現可能な手順”として整理します。
EVIDENCE / 証拠

溶接ビードを拡大撮影し、余盛・ビード幅・表面粗さを確認した外観写真です。欠陥(ピット/アンダーカット)や溶け込み境界の状態をチェックし、品質記録として残します。
よくある課題|「1mm vs 20mm」で何が問題になるのか
チタンの異厚接合は、現場泣かせの難題です。
難しさの正体は、溶接条件そのものではなく「熱の偏り」にあります。
- (課題①)20mmに合わせて電流を上げると、1mmは一瞬で溶落して穴が開く。
- (課題②)1mmに合わせて電流を下げると、20mm側が熱を奪い溶け込まない(ヒートシンク現象)。
- (課題③)容器用途のため、ピンホール・クラックが許されず、PT合格が必須になる。
市販品や一般的な段取りの延長では成立しにくく、
「薄板を守りながら、厚板に確実に溶け込ませる」という矛盾を同時に満たす必要があります。
原因|なぜ一般的な方法では解決できないのか
本質は、熱容量の圧倒的なアンバランスです。
ここを見誤ると、どれだけ条件表をいじっても安定しません。
- (原因①)厚板側は巨大なヒートシンクとして機能し、熱を急速に拡散させる。
- (原因②)薄板側は熱容量が小さく、わずかな過入熱で溶落・組織劣化が起きる。
- (原因③)チタンは酸化に弱く、裏面のバックシールドが不完全だと欠陥化が早い。
調整するのは「電流」ではありません。
調整すべきは「熱の行き先」と「酸素の遮断」です。
したがって、表面的な溶接条件の調整ではなく、
物理法則に基づいた段取り設計(治具・狙い・シールド)が重要になります。
解決策|数学者の思考で解く「論理的溶接」
私は今回、数学の名著『いかにして問題をとくか(G.ポリア著)』の思考法を、段取りに落とし込みました。
「未知のものは何か?」「条件は何か?」を整理し、次の3点に絞って対策しました。
①【熱制御】アークの狙いは20mm側“一点集中”
薄板(1mm)にアークを当てる設計は、成立しません。
狙いは徹底して20mm側です。厚板側で溶融プールをつくり、その余熱だけで1mm側を舐めるように融合させます。
これにより、薄板の溶落を防ぎながら、厚板への確実な溶け込みを確保します。
②【物理的工夫】銅製チルブロックで“薄板を守る”
薄板側は、熱が逃げないと一瞬で破綻します。
そこで熱伝導率の高い銅製の当て金(チルブロック)を密着させ、薄板の過入熱を物理的に逃がします。
結果として、歪み・酸化・溶落リスクを同時に抑制できます。
③【品質保証】専用治具で“完全バックシールド”
チタンは酸化したら終わりです。
容器の内側形状に合わせた専用治具を製作し、アルゴンが滞留する構造にして裏面までガスでパックします。
酸素を遮断することで、銀色のビードを安定して再現できます。
異厚接合は、特殊技能というより「特殊な段取り」です。
条件が揃えば、結果は再現できます。
逆に言えば、条件が揃っていない状態で「やってみる」は危険です。
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よくある質問(FAQ)
Q1. チタン以外の異厚溶接も対応できますか?
はい、対応可能です。ステンレスやアルミなど、素材の熱伝導率や酸化特性に合わせて、治具・シールド・溶接条件を設計し、高品質な接合を狙います。
Q2. 気密性が必要な容器ですが、検査体制はどうなっていますか?
PT(浸透探傷試験)は標準で対応可能です。さらに高度な気密が必要な場合は、ヘリウムリーク等の検査も連携して実施可能です(条件によりご相談となります)。
Q3. 試作1個からでも依頼できますか?
はい、1個からのワンオフ製作や試作開発に対応しています。異厚・難材・気密など「成立条件の整理」から必要な場合は、事前に条件確認をご一緒に進めます。
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仕様が固まっていない段階でも、成立条件(熱・治具・シールド)から整理できます。
「まず条件を確認したい」段階から、技術相談としてご連絡ください。
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