キズは一発アウト|スナポンPBFTで「分解・調整」を標準化する(サンバー整備の気づきを治具へ転用)
ものづくりだより529号(製作事例)
おはようございます。株式会社上村製作所の上村昌也です。
分解・調整の現場で、いちばん怖いのは「うっかり付いた一筋のキズ」です。
外観品なら当然NGですし、アルマイト・塗装品なら再処理が発生します。さらに厄介なのは、キズが「クレームの火種」として後工程に残り続ける点です。
だからこそ当社では、溶接や加工条件と同じレベルで、分解・組立の“段取り設計”を重視しています。
今回その考え方を、社用車サンバーのメンテナンスであらためて思い知らされました。
そして、いつもお世話になっているスナップオン(通称:スナポン)の提案で導入したPBFTが、BtoBの組立・微調整にもそのまま転用できる「標準化の武器」だった、という話です。
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きっかけはサンバーのドアモール交換
長年使っているサンバーのドア窓枠モールが、経年劣化で痩せて浮き、隙間が目立ってきました。
新品に交換しようとしたところ、構造上「まずドアミラーを外さないとモールが抜けない」という依存関係に直面します。
ここで無理にこじると、塗装面が剥げるか、部品側が割れるか、どちらかが起きます。現場の言葉で言えば、一発アウトです。

経年劣化で痩せたサンバーのドア窓枠モール(交換前)。ゴムが浮いて隙間が出ると、外観だけでなく作業時のキズ原因にもなります。この交換が改善の出発点となりました。現場の気づきを治具へ転用します。

新品モールへ交換後。窓枠の密着が戻り、外装を傷つけない外し方の重要性を再認識しました。車でも治具でも“キズは一発アウト”であり、工具選定は段取り設計そのものです。
この「ヒヤッ」とする瞬間は、実はBtoBの現場でも同じです。
試作治具の微調整、表面処理後の組立、シール材・ガスケットの剥離など、“分解”という行為には必ず接触とこじりが入り、そこにキズのリスクが潜みます。
スナポンPBFT50R/60Rを「2本買い」した理由
どうやって安全に外そうかと悩んでいたところ、いつもお世話になっているスナップオン(スナポン)のバンセールス・齋藤さんから「これ、すごく良いですよ」と提案されたのが、PBFTシリーズでした。
ポイントは“高い工具を買う”ことではなく、狭所でも無理なこじりを排除し、作業を標準化できることです。
そこで私は、アプローチの深さを使い分けるために、長さ違いの2種類(PBFT50R、PBFT60R)をセットで導入しました。結果として、これが大正解でした。

スナップオンのバンセールス提案で導入したPBFT50R/60R。長さ違いを揃えることで狭所でも無理なこじりを排除し、塗装面やアルマイト面を守りつつ固着解除を標準化します。

PBFT60Rの品番表示とクリップ側。『どの工具で外したか』が残ると、段取り表や作業標準に落とし込みやすく、後工程の手直し・クレーム予防まで再現性が上がります。
なぜ分解でキズが付くのか(失敗パターンの整理)
ここからは、設計・品質の方にも伝わるように、原因を“現象”として整理します。
分解でキズが付くのは、だいたい次の3パターンです。
- 点で押す(点荷重):マイナスドライバー等で一点に力が集中し、塗膜・アルマイト・母材表面に局所的な塑性変形が起きます。
- 角度が悪い(こじり角):工具が浅く掛かって滑り、接触点がズレて“引っかき傷”になります。
- 代用品を使う:「とりあえず」で硬い工具を当てると、相手材より工具の方が硬く、勝負になりません。
分解の現場は、加工や溶接と違って「作業者の感覚」に寄りやすい領域です。
しかし、だからこそ品質保証の観点では、工具選定と手順の固定(標準化)が効きます。再現性が上がれば、後工程の手直しや、外観NGの取りこぼしが減ります。
PBFTの“効き方”を工学的に言うと
PBFTを使ってみて感じたのは、単に「傷が付きにくい」ではなく、傷が付くメカニズムを潰す形状になっている点です。
言い換えると、工具に“品質保証の思想”が入っています。

先端が薄く幅広いフォーク形状。力を面で分散し、ガスケット吸着やシール固着の解除でも母材を傷つけにくいのが特長です。マイナスドライバー代用を避け、品質を守ります。
(1)力を「点」ではなく「面」で受ける
先端が薄く幅広いフォーク形状になっており、接触面積が確保できます。
この結果、同じ力を掛けても面圧が下がり、塗装面・アルマイト面・母材表面の損傷リスクが下がります。
分解のキズは「強い力」ではなく、局所的な面圧の集中で起きることが多いため、ここが効きます。
(2)長さ違い=アプローチ深さの規格化
PBFT50R/60Rを揃えると、狭所・奥まった箇所でも、無理に角度を付けずに掛けられます。
つまり「届かないからこじる」という事故を、段取り設計で先に潰せます。
これはBtoBの組立・治具調整でも同じで、“届く工具”を先に用意することが、品質を守ります。
(3)品番が残る=作業標準に落としやすい
PBFT60Rのように工具が特定できると、「どの工具で外したか」を段取り表・作業標準へ落とし込めます。
属人的な“勘”が、共有可能な“仕様”に変わります。ここまで来ると、工具は単なる道具ではなく、品質保証の一部になります。
現場へ落とす:キズレス分解の標準化チェックリスト
最後に、当社がこの手の「キズレス分解」を標準化する際の、実務チェックリストをまとめます。
ポイントは、作業者の腕に頼るのではなく、段取りで事故を起こせない状態にすることです。
- 相手材の定義:塗装/アルマイト/鏡面/ヘアラインなど「触れてはいけない面」を先に決める。
- 保護の設計:養生テープ・保護フィルム・当て板など、工具が滑っても被害が出ない逃げを作る。
- 掛け代の確保:工具が入る隙間・掛け代があるかを確認し、無理なら工程を戻して分解順を見直す。
- 工具の規格化:代用品禁止。PBFT50R/60Rなど「指定工具」を段取り表に明記する。
- 解除方向の固定:引く/持ち上げる/左右に振る、など解除方向を決め、こじり角を一定にする。
- 記録を残す:どの工具で、どの順番で外したか(品番含む)を残し、次回の再現性に繋げる。
この“チェックリスト化”ができると、後工程の手直し・外観NG・クレーム予防まで、効いてきます。
工具導入の本質は、ここにあります。
治具・試作組立へ転用できる具体例
PBFTのような非傷つけ工具が効くのは、車の内装外しだけではありません。
当社のBtoB領域では、たとえば次のような場面で「キズレス分解」の考え方がそのまま使えます。
- シール材・ガスケットの固着解除:吸着して剥がれない面を、母材を守りながら分離する。
- 表面処理後の組立:アルマイト面・塗装面の外観を守り、再処理を出さない。
- 試作治具の微調整:繰り返しの分解・組立でも、傷を増やさず精度を維持する。
一言でまとめると、「分解も品質工程」という考え方です。
加工・溶接と同じく、分解・調整も“設計すべき工程”として扱うと、現場は強くなります。
まとめ:工具導入の本質は「再現性の設計」
サンバーのドアモール交換という小さな出来事でしたが、そこにはBtoBの現場と同じ「品質の地雷」が埋まっていました。
キズは一発アウトであり、分解・調整は“作業”ではなく“工程”です。
スナポンPBFTの導入で得た収穫は、工具そのもの以上に、段取り表・作業標準へ落とし込める再現性でした。
もし、表面処理後の組立や、固着解除、治具の繰り返し調整で「キズ・手直し・再処理」に悩まれている場合は、工程設計から一緒に整理できます。
現物写真(全体+アップ)だけでも構いませんので、早い段階でご相談ください。
FAQ
Q. なぜ「非傷つけ工具」をわざわざ指定して標準化する必要があるのですか?
分解時のキズは、外観NG・再処理・手直しの直接要因になります。さらに、工程内で発生したキズは後工程へ持ち越されやすく、原因追跡も難しくなります。
代用品を禁止し、指定工具・指定手順に落とすことで、事故確率を段取り側で下げられます。
Q. PBFT50R/60Rのように「長さ違いを揃える」意味は何ですか?
届かないから角度を付けてこじる、という状況がキズの主因になりがちです。長さ違いを揃えるとアプローチ深さを規格化でき、無理なこじりを排除しやすくなります。
結果として「誰がやっても同じ」状態に近づきます。
Q. 分解・調整の手順を段取り表に落とすと、具体的に何が良くなりますか?
工具・手順・解除方向が固定されるため、再現性が上がり、手直し工数や外観NGのバラつきが減ります。
また「どの工具で外したか」まで残せると、異常時の原因追跡が速くなり、クレーム予防にも繋がります。
免責事項:
本記事は現場知見に基づく一般的な解説です。最適な工具・手順は、対象物の材質、表面処理、形状、拘束条件、要求品質により変動します。安全対策(保護具・養生・作業姿勢等)を徹底のうえ、必要に応じて専門家へご相談ください。
図面不足・仕様未確定でも大丈夫です。
「決める順番」を整理し、割れ・歪み・段取りの論点を見える化します。
- 現状写真(全体+分解部アップ)
- 材質・板厚(不明なら推定でもOK)
- 困っている症状(キズ/滑り/固着/再処理など)
- 求める条件(外観・精度・再現性・コスト・納期の優先順位)
※内容によっては、加工依頼(見積)へそのまま移行可能です
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075-982-2931
溶接管理技術者1級
保有資格IIW IWP


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